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農地の相続では納税猶予を利用

一定の条件を満たせば農地の評価額は大幅に低くなり、相続税が安くなります。また、条件次第で納税猶予は打ち切られるケースがあります。

納税猶予が認められる条件

農家の人が相続の後も農家を続けることができるようにするため、農地を相続した時には相続税を大幅に安くできる制度があります。
この制度を「農業相続人が農地等を相続した場合の納税猶予の特例 [平成26年4月1日現在法令等]」といいます。
まず、農業相続人が、農地を相続によって取得し、農業を継続する場合には、一定の条件のもと相続税の納税が猶予されます。納税が猶予されるというのは、とりあえずは税金を納めないですむということです。そして、「その相続人の死亡の日」または「その相続税の申告書の提出期限の翌日から20年を経過する日」のいずれか早い日に、猶予されていた納税が免除されます。つまり税金を納めないで済むようになるというわけです。
相続税の納税猶予が認められるためには、その農地、被相続人および相続人について次の条件を満たしている必要があります。

農地について

被相続人が所有し、農業を営んでいた農地である必要があります。3大都市圏の特定市の市街化区以内の農地は、原則として納税猶予の対象になりません。ただし、生産緑地区内にある農地はその対象となりますが、農業相続人の死亡の日まで納税が免除されないことになっています。なお、納税猶予の対象となる農地には、一般の農地のほか採草放牧地および準農地が含まれます。

被相続人について

生前に所有していた農地で、その死亡の日まで農業を営んでいたことが条件です。

相続人について

相続税の申告期限までに農業経営を開始し、その後も引き続き農業経営を行うと認められることが条件です。これについては農業委員会の証明か必要になります。また、申告期限までに、その農地を相続によって取得している必要があります。したがって、遺産分割協議の成立していない未分割農地は、納税猶予の対象になりません。手続きとしては、申告期限までに、納税猶予額に相当する担保を提供し、農業委員会の証明書などの必要書類を添付した相続税の申告書を提出する必要があります。

納税猶予される金額

納税有余額は農地を農業投資価格で評価されます。農業投資価格とは、その農地を農業のみに使用する場合に成立すると認められる売買価格をいいます。
農業投資価格は毎年地城別に国税局長がその土地の時価にかかわらず定めていてます。相続税の納税猶予を受けた場合の農地の評価額はきわめて少額となって、その節税効果は非常に大きなものになります。
関連リンク 財産評価基準書 
  各地域の「農業投資価格の金額表」を参照

相続税の免除と納税猶予の打切り
納税猶予されていた相続税は、原則として、農業相続人の死亡の日、またはその相続税の申告期限の翌日から20年を経過した日のいずれか早い日
に免除されます。免除されるまでは、納税が猶予されているにすぎません。免除される前に、その農地を譲渡等した場合には、納税猶予は打切りとなって、猶予されていた相続税と原則として年2~3%の利子税を納めなければなりません。納税猶予の打切りには、次のように全部打切りと一部打切りがあります。
①全部打切り
・ 農業経営を廃止にした場合
・ 農地の面積の20%を超えて譲渡・転用・贈与等した場合などには、猶予されていた相続税の全部が打切りとなります。
②一部打切り
・ 農地の面積の20%以内を譲渡・転用・贈与等した場合
・ 収用等により譲渡した場合などには、その農地に対応する納税猶予額が打切りとなります。

相続税の納税猶予は、それ以後引き続いて農業経営を行うことが確実な相続人にとっては、非常に都合のよい制度です。しかし、今後もずっとその農地で農業経営を続けていくことが確実でない人は、猶予を受けるかどうかを慎重に決定しなければなりません。20年問を経過しないうちに農業経営をやめた場合や農地を売却等した場合に、納付しなければならない相続税額と利子税の負担はかなり大きなものになります。なお、相続によって取得した農地のうちの一部だけについて、納税猶予を受けることもできます。
①将来に売却や転用の可能性が少しでもある農地は納税猶予を受けない
②市街化調整区域内の農地は適用を受けるが、市街化区域内の農地は受けない
というように農地によって適用するかどうか選択すると良いでしょう。

納税猶予される税額の計算

納税
猶予額
全相続財産を原則的方法で評価し、その価額に基づいて計算した相続税の総額 納税猶予を受ける農地を農業投資価格で評価しその他の財産を原則通り評価して、その価額に基づいて計算した相続税の総額

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